普蔵寺日和 第二回目 『愛語』
「愛語(あいご)は愛心よりおこる、愛心は慈心を種子(しゅうじ)とせり」
人を生かし、人を仏道に導く言葉が愛語です。
愛語は人を愛することにはじまります。
人を愛するとは、無限の縁(えん)の中で支え支えられているお互いを自覚し、
慈しみあう心を根本とします。
現代ほど言葉の乱れた時代があったでしょうか。
粗雑な言葉は世の乱れを生み、愛心なく慈心のない生命(いのち)を軽視した社会に
拍車をかけます。
言葉は思いのあらわれであり、単なる言語や伝達手段ではありません。
自らの人格を宿し、自らの人格をつくるのです。
一語一語を大切にしなければなりません。
現実に、家庭も国際社会も言葉で動いているのです。
好ましい関係は好ましい言葉によって結ばれます。
赤子(あかご)を前にして限りなく優しくなれるその心で、共に語り合いましょう。
徳ある行いは素直に讃え、徳至らぬときにこそ慈しみを忘れてはなりません。
曹洞宗が掲げるスローガン「人権・平和・環境」の実現は、毎日の生活から
かけ離れたところにあるのではありません。
愛語の実践が、柔らかにして他を思いやる自己を育て、ひいては人権を尊重し、
平和を願い、環境に思いがいたる人を育むのです。
お釈迦さまの教えを受け継ぎ、正しい信仰に生きる私たちの愛語の実践が、
慈しみあふれる社会を築く第一歩なのです。
日々(にちにち)、愛語を心がけてまいりましょう。
南無釈迦牟尼仏
曹洞宗 管長 福山諦法