普蔵寺日和 第六回目 『告諭』
今、私たちは、地球温暖化の問題をはじめ災害、戦争、差別、貧困、自殺などいのちをめぐる諸問題に直面しています。いずれも曹洞宗が掲げる三つのテーマ「人権の尊重、平和の確立、環境の保全」に深く関わるものです。
瑩山さまは、「常(つね)に大慈大悲(だいずだいひ)に住(じゅう)して、坐禅無量(ざぜんむりょう)の功徳(くどく)、一切衆生(いっさいしゅじょう)に回向(えこう)せよ」とお示しです。毎日、み仏とご先祖が見そなわすもとで、姿勢を調え、呼吸を調え、心を調えましょう。そのとき、生かし生かされ、強い絆(きずな)で結ばれている一人ひとりのいのちの尊さに気づき、慈悲心あふれる行いをめぐらす生き方ができるのです。
お互いに相手を尊(とうと)び、相手の立場に立って悩み苦しみ、考え、行動し、共に生きる理想社会実現のため、まず私たちが率先(そっせん)して布施(ふせ)・愛語(あいご)・利行(りぎょう)・同事(どうじ)の行(ぎょう)を実践(じっせん)しましょう。
道元さまは、「現在(げんざい)の身命(しんみょう)の存(そん)せらんあひだ、このんで愛語すべし」とお示しです。愛語は、人々の幸せな生活と心の安寧を願い、慈心から発せられる言葉です。この愛語の行(ぎょう)には布施・利行・同事の行が十分に具わっていると説かれています。本年度もこの「愛語」を実践の柱とします。
愛語は苦しいときも楽しいときも、常に相手のことを思い、人を生かし、人を仏道に導く菩薩行です。
「南無釈迦牟尼仏(なむしゃかむにぶつ)」のお唱えは愛語の根本です。
南無釈迦牟尼仏(なむしゃかむにぶつ)
曹洞宗管長